富士五湖を芸術の街へ 日展が参画山梨県・富士河口湖町との連携協定に調印
年内にもアートイベントを開催

富士五湖地域を国際的なアートシティへ―。日本最大級の総合美術展覧会を主催する、公益社団法人日展は4月10日、山梨県が進める「富士五湖自然首都圏フォーラム」への参画を正式発表し、本県と富士河口湖町と連携協定を結びました。アートイベントの開催や芸術家の育成を通し、富士五湖地域のアートシティ実現を目指します。今年は、富士山が世界遺産に登録され10年の節目の年です。富士山に関連したアートの展示なども検討します。

「富士山の世界遺産登録から10年の節目 芸術の町をつくりたい」

本協定の締結式は、富士山を望む河口湖北岸にある「河口湖円形ホール」(山梨県富士河口湖町)で行われました。締結式には日展の宮田亮平理事長、本県の長崎幸太郎知事、富士河口湖町の渡辺喜久男町長らが出席しました。締結式で3氏は協定について次のように述べました。

「富士山が世界遺産に登録されて、今年が10年の節目の年です。富士山と富士五湖の自然からは、美術と同時に音楽性をも感じます。全力をつくして皆様とともに『芸術の町』をつくっていきたいと思っています」

(公益社団法人日展・宮田亮平理事長)

「美術界をけん引する日展と連携を構築できたことを大変心強く思っています。古今東西の卓越した芸術の源泉である富士山の麓で、アーティストがコミュニティーを形成し、新たな試みが生み出されることを願っています」

(山梨県・長崎幸太郎知事)

「コロナ禍で影響を受けた観光客は、東南アジアからのインバウンドを中心に復活してきています。日展にご支援いただくことで、国内外からの人の流れが生まれ、町の経済が活性化することを期待しています」

(富士河口湖町・渡辺喜久男町長)

河口湖湖畔には富士山をテーマにした作品が収集されている町立河口湖美術館など、アートに関連した施設があります。近代日本美術の発展に大きく貢献してきた日展の参画は、フォーラムが目指すアートシティの実現に向けた取り組みの推進が期待されます。日展はアートイベントの開催や、芸術家の育成で自然首都圏構想をサポートします。

協定書を手にする(左から)公益社団法人日展の宮田亮平理事長、山梨県の長崎幸太郎知事、富士河口湖町の渡辺喜久男町長

アートから交通まで 5つのWGでフォーラムを推進

富士五湖自然首都圏フォーラムは、山梨県富士五湖地域を、自然豊かなリゾートと先進的な首都圏機能が融合する「自然首都圏」へ発展させることを目指す協働組織団体です。フォーラムは富士山の世界文化遺産登録10周年を契機に、2022年12月に設立されました。産官学の枠を超えて国民や県民、社会起業家、NPO、社会貢献団体といった、あらゆるステークホルダーの参加を目指します。

豊かな自然の中で生活し、余暇を楽しみながら、リモートワークで首都圏の企業で働く。コロナ禍をきっかけに新たなワーク・ライフスタイルを望む声が広がっています。東京圏に近く、豊かな自然がある山梨県はこのワーク・ライフスタイルを実現する可能性を持っているのです。

フォーラムは「自然首都圏の実現」という共通目標を掲げ、以下にある5つのワーキンググループ(WG)で取り組みを進める計画です。

(1)デジタル田園都市国家構想の推進などを行う「自然首都圏構想WG」
(2)環境に配慮したモビリティーを推進する「富士五湖グリーンモビリティWG」
(3)アートや音楽イベントで文化を育成する「アートシティ富士五湖WG」
(4)国際会議場やホテルなどを誘致する「富士五湖アカデメイアWG」
(5)豊かな自然と首都機能が融合した海外都市と連携する「グローバル富士五湖WG」

今回の日展との取り組みは3の「アートシティ富士五湖WG」の中で進めていく予定です。今後、多様な知見や価値観を持つ個人や団体などが集まり、先進的な取り組みを進めていきます。

「文化、観光、経済のバランスがとれる取り組みにしたいと思います」と語る公益社団法人日展の宮田理事長

日本の美術界をリードする日展 普及活動にも注力

今回、フォーラムに参画した公益社団法人日展は、日本の美術振興を目的に設立された歴史のある団体です。第1回の文展が開かれたのは1907年(明治40年)のことです。以来、日本の美術界をリードしてきました。昭和33年からは民間団体として、社団法人日展を設立し第1回日展を開催しました。

現在は日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書と幅広く、巨匠から中堅、新人を多数擁して世界にも類のない一大総合美術展として、国内外の美術ファンの注目を集めています。近年、日展が力を入れているのが、若い世代の鑑賞者の育成をはじめとした普及活動です。ワークショップや作品の解説会、アートスクールなどを定期的に開いています。

こうした活動に注力する日展が、富士五湖自然首都圏フォーラムに参画することで、富士五湖地域でのアートイベントの開催やアーティストによる作品展示などが活発になることが期待されているのです。

「富士五湖という地域自体が『資源』として存在しています。そのかけがえのない資源をどう生かすのかは私たち作家の仕事です。私たち日展は『創造の資源』としてフォーラムに参画したいと思います。アートを切り口にして、人の流れを生み出していきます」

(公益社団法人日展・神戸峰男副理事長)
連携協定の締結式が行われた河口湖円形ホール

アートプロジェクトで、新たな価値を創造する場に

富士山は2013年、「信仰の対象と芸術の源泉」としてユネスコ世界遺産委員会によって、世界文化遺産に登録されました。富士五湖とは、富士山麓地域にある「河口湖」「本栖湖」「精進湖」「西湖」「山中湖」の5つの湖の総称です。フォーラムは富士五湖地域を「新たな価値が生み出される場所につなげる」という目標もあります。

フォーラム代表代行の田坂広志・多摩大学大学院名誉教授は地域の魅力について「世界に誇る富士山があり、周囲に五つの湖と豊かな自然があります。これが国内外のどの地域にもない最大の魅力です」と説明します。首都圏からアクセスしやすい点も他のリゾート地と比べ、有利です。こうした背景から首都圏に近く、豊かな自然に囲まれた山梨県でフォーラムの構想が生まれたのです。

「富士五湖自然首都圏フォーラムは、人口は多くなければならない、都市は大きくなければならないといった固定観念を手放し、新たな都市や国家、成長のビジョンを提唱することを目的としています。日本の芸術界の中心である日展の参加によって、社会やメディアの注目が集まり、他の芸術団体や音楽団体も参加する流れが加速することを期待しています。そしてフォーラムの1つの柱である『アートシティ富士五湖構想』が大きく動き出すことを期待しています」

(フォーラム代表代行の田坂広志・多摩大学大学院名誉教授)

日展と山梨県、富士河口湖町は今後、アート施設が連携したイベントの開催や、若手アーティストの育成支援の具体化に向けて、協議に入ります。また、富士山の世界遺産登録から10年の今年は、富士山に関連する作品の展示も検討します。長崎知事は「日展の参画が芸術家の皆さんとの橋渡しになると期待しています。さまざまなアートプロジェクトを通して、富士五湖地域に新しい価値を創造したいと考えています」と語っています。

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