2022年12月、富士五湖自然首都圏フォーラムが設立されました。このフォーラムが目指す「自然首都圏」のビジョンとそれを富士五湖地域で育もうとする背景について、フォーラムの最高顧問に就任した建築家の隈研吾氏と、フォーラム代表代行の田坂広志・多摩大学大学院名誉教授が、対談形式で語りました。
対談のダイジェスト版動画は、こちらからご覧いただけます。
対談の全編(フルバージョン)も近日公開の予定です。
隈研吾・最高顧問(以下、隈):日本全体を象徴する場所として、富士山周辺というのは断然アイコン性が高いんですね。これからの世界に対して、非常に強いアピールができる場所だなという風に感じております。
ちょうど今年、2023年にこれが始まるというのは、コロナ禍や戦争というものの後に、僕らがもう一回、「希望の場所」をつくらなきゃいけないということなんです。
田坂広志・代表代行(以下、田坂):コロナ禍が来て、本当に緑の中で、本当に自然と調和した生活をしながら、決してそれは隠居でも別荘でもアフターファイブでも週末でもなく、もう日々仕事をしながらもそのような生活ができる、という条件は十分に整ったと思います。
「自然首都圏」というイメージは、「単に東京の向こうを張って」といった意味ではなく、「21世紀の新しい首都機能とは一体何か」という問いへの答えなのです。
私は、そもそも「首都圏」という考え方が変わるべきだと思っています。だから、そのアンチテーゼとして、「東京がここまで大きくなってしまって本当にそれで良いのか」という問題提起でもあったのです。
むしろ、いまは「コンパクトシティー」とい考え方が主流になっている。都市にはもっと最適なサイズがあるだろうというのが世界の常識になっているのです。自然と調和して、ある程度の大きさで、十分に高度な、そして文化的な生活ができる。 そう言ったものが首都圏であるという考え方です。
隈:そうですね、今回「自然首都圏」と思い切って言ってしまったこの感じが僕はすごく好きで、やはり「首都圏」って言った時に我々は「非常に大きくなりすぎた東京」みたいなものしかイメージしてこなかったんですけど、富士五湖を「首都圏」と言ってしまう。
それはある意味で、東京よりも面白い文化を味わうことができる。
田坂:「富士五湖自然首都圏」構想という名前を付けたのは、やはり首都圏のような文化を含めた機能がある程度ないと、どこか物足りなくなってくる、と考えたからです。
そこで文化的なインフラ作りとして考えたのが「アートシティー富士五湖」構想であり、また、「富士五湖アカデメイア」構想ですが、この構想は、教育・文化・芸術・音楽といったものも、しっかりとこの地域に育てていこうと考えています。
隈:富士五湖の中で聴く音楽、音楽の聴き方、富士五湖の中でのスポーツの仕方など、都会の劇場とかスタジアムでやるのとは全く別の方法で、その文化を味わうことができる。そういうものを、この自然首都圏構想の中では提示できるのでは、という期待もあるんですよね。
「希望の場所」として、富士山というのは日本人の誰にとっても、ぱっとイメージできる場所なんですね。そういう場所が希望の場所として登場するというのは、この2023年にふさわしい、僕らの待ち望んだ構想かなというふうに感じます。